【甘党の店 三芳】宇都宮のあかりが、ひとつ消えた日

甘党の店・三芳が、2025年12月で店を閉じました。
長年TonTonの取材でお世話になり、仕事としても、私生活でも通い続けてきた店だっただけに、言葉にならない寂しさを覚えています。
三芳は、昭和26年に先代であるお父様が始めたお店です。私たちが知る店主さんは2代目でした。大学を卒業後、子どもの頃から手伝っていた家業を継ぎ、長年その暖簾を守り続けてきました。手間のかかる甘味を、変わらぬ方法で丁寧に作り続ける姿は、まさにこの店そのものだったように思います。
暖簾をくぐると、いつも変わらない空気がありました。
甘味が運ばれてくるまでの時間、器の音、店内に流れる静かな気配。効率や流行とは違う、ゆっくりとした時間が、そこには当たり前のように流れていました。
取材で伺った際、店主さんはいつも穏やかで、丁寧に接してくださいました。必要以上に語らず、けれど誠実に向き合ってくれる。その姿勢が、三芳という店の空気をつくっていたのだと思います。
プライベートで伺ったときは、店主さんはずっと厨房にいらっしゃるため、残念ながらお顔を拝見することはできませんでしたが、顔見知りのお姉さんが「先日は取材、ありがとうございました」と、とても感じよく声をかけてくださいました。
私自身、母と一緒に訪れたこともあれば、娘を連れて行ったこともありました。世代を越えて三人並んで同じ甘味を味わえる場所が、この街にあったことは、今振り返るととても貴重なことだったと感じます。
宮っ子が集まると、よく三芳の話題で盛り上がりました。
「あそこのあんみつが好き」
「夏はやっぱりかき氷」
「実はうどんしか食べたことがない」
そんな何気ない会話が自然に交わされるほど、三芳は街の暮らしに深く根付いた存在でした。
老舗の店が閉じるということは、単に一軒の店がなくなるということではありません。
長い年月をかけて積み重ねられてきた記憶や、街の文化のあかりが、ひとつ静かに消えることなのだと、今は強く感じています。
まだ、自分の気持ちをうまく言葉にできているとは思えません。ただ、寂しくて、そして心から感謝しています。
三芳がこの街にあったこと。
多くの人の日常に寄り添い、静かに甘い時間を届け続けてくれたこと。それはこれからも、宇都宮の記憶の中に残り続けるはずです。
三芳さん、本当にありがとうございました。
あなたは確かに、宇都宮の文化でした。



